2018年度予算の概算要求は社会保障費や防衛費の増加を背景に

2018年度予算の概算要求は社会保障費や防衛費の増加を背景に100兆円の大台を超えた。だが税収は伸び悩み、財源の捻出は容易ではない。政権の支持率が低下する中、歳出拡大圧力も強い。ただ、18年は消費税増税の最終判断などを控え、ここで歳出を絞り込む姿勢を明示しなければ、財政再建はおぼつかない。

 厚生労働省高齢化を背景に実質的に過去最大の31兆4000億円を要求。社会保障費の自然増は6300億円となったが、政府の財政健全化計画では5000億円程度に抑える必要がある。これとは別に待機児童対策で約9万人分の保育の受け皿整備のため約500億円の手当てが求められる。

 財務省は診療報酬と介護報酬の同時改定での報酬引き下げや、高所得者への児童手当廃止などで財源確保を目指すが、反発も予想され、作業は難航しそうだ。また、防衛省の予算も北朝鮮情勢が緊迫化する中、大幅な削減は難しい状況だ。

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 政府が目玉とする幼児教育の無償化は概算要求段階では金額を示さない「事項要求」となった。年末にかけた予算編成過程で、対象の線引きや財源探しをしなければいけない。

 一方、税収は頭打ちで、歳入不足が深刻化する懸念がある。16年度の税収総額は前年度比1.5%減の55兆4686億円と7年ぶりのマイナスで、今後も大幅な税収増は見込みにくい。

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 しかし、学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題などで支持率が低迷する中、政権は国民の不満を買いかねない歳出削減に及び腰になる可能性がある。与党では政権浮揚のため景気対策を盛った17年度補正予算を編成すべきだとの意見もくすぶり、国債増発につながる恐れもある。

 安倍晋三首相は18年に消費税率の10%への引き上げを最終判断する見通しだが、増税が延期されれば、財政はさらなる逼迫(ひっぱく)が予想される。

 政府は18年に財政健全化計画の進捗を検証し、その後の財政健全化策を見直す考えで、18年度予算編成での歳出改革で、どこまで財政再建の意識を醸成できるかが問われる。(中村智隆)